女性のヒト乳頭種ウイルス(HPV)感染症(尖形コンジローム)
目次
- 尖形コンジロームにおける腫瘤の形態
- 女性の妊娠と尖形コンジローム
- 尖形コンジロームの治療
- 尖形コンジロームの診断
- 尖形コンジロームの症状
- 尖形コンジロームの発生部位
- 尖形コンジロームの病態
- 尖形コンジロームの病因
- 女性の尖形コンジローム
- 頸部上皮内腫瘍(CIN)
- 女性のヒト乳頭種ウイルス(HPV)感染と発癌の関連
尖形コンジロームにおける腫瘤の形態
腫瘤の外観は、外陰部などに発生する典型的なものでは、角化が強く、隆起した腫瘤の表面が無数の尖った硬い突起でおおわれます(鶏冠状)。このタイプは大きな腫瘤を形成することがあります。
子宮頸部、膣前庭部に発生する角化の少ないものは、丘状、半球状に隆起し、表面は透明で丸みを帯びた小突起でおおわれています。このタイプは大きな腫瘤を形成することはありません。
女性の妊娠と尖形コンジローム
妊娠中の尖形コンジロームについては、母子感染率が低いこと、分娩後に自然退縮が起こることから、経過を見るだけの場合もありますが、重症例の場合、外科治療が行われることもあります。
尖形コンジロームの治療
尖形コンジロームの治療法には、外科的切除、電気焼灼、冷凍法、レーザー蒸散法など外科的療法と、ポドフィリン、5-フルオロウラシル、インターフェロンなどを用いる薬物療法があります。
ポドフィリン、5-フルオロウラシルでは外用薬による投与が、インターフェロンでは注射による全身または局部投与が行われます。
尖形コンジロームの診断
典型的な尖形コンジロームでは視診のみによる診断も可能ですが、病理組織学的診断が他の類似疾患との鑑別のために重要です。
またPCR法によるHPV DNAの検出(病原体核酸検出)、血清抗体の検出も近年行われるようになってきています。
尖形コンジロームの症状
感染してから平均約3ヶ月の潜伏期間の後、腫瘤が形成され、それに伴い腫瘤の触知、帯下の増量などの症状が認められますが、子宮頸部、膣の尖形コンジロームでは無症状のこともあります。
また尖形コンジロームでは、トリコモナス膣炎、カンジダ外陰・膣炎、淋菌感染を伴うことも多く、その場合には痒み、疼痛がある場合もあります。
尖形コンジロームの発生部位
尖形コンジロームの発生部位は、外陰、会陰、肛門周囲、膣、子宮頸部などの粘膜または皮膚・粘膜移行部などで、性交で表皮に損傷を受けやすい部位に多く発生します。まれに、尿道、膀胱、恥丘に存在することもありますが、腹部、大腿部、臀部に広がることはありません。
尖形コンジロームの病態
尖形コンジロームの好発年齢は10代後半から30代前半で、生殖年齢に好発するので妊娠と重なる場合も多くあります。
妊娠中に発生する尖形コンジロームは増殖傾向が強く、大腫瘤の形成、病変の広範囲への拡大が生じやすくなります。一方、分娩後には多くに自然退縮が認められます。これらは、妊娠による細胞性免疫の抑制、性器局所血流の増加、帯下の増量などが原因と考えられます。
またHIV感染者など免疫抑制状態の場合にも、尖形コンジロームの罹患率が高く、また病変が増大しやすいことから、尖形コンジロームの発生には免疫系の関与が示唆されています。
尖形コンジロームの病因
尖形コンジロームの原因ウイルスは、ほとんどがヒト乳頭種ウイルス(HPV)6型と11型です。
乳頭種ウイルスの特徴としては、宿主動物および感染組織の特異性があげられます。上皮細胞のみに感染するという性質は全ての乳頭種ウイルスで共通していますが、ヒト乳頭種ウイルス(HPV)は、ヒトのみに感染が成立し(宿主動物の特異性)、その型によって感染する部位、病変が特定されます(感染組織の特異性)。
女性の尖形コンジローム
尖形コンジロームは、ヒト乳頭種ウイルス(HPV)が原因の性感染症で、病変として腫瘤(疣贅)がみられます。好発部位は女性の場合、大小陰唇、会陰部、膣、肛門周囲です。
HPVは多くの種類に分類されていますが、尖形コンジロームの原因は、そのほとんどがHPVの6型と11型の性器感染です。
頸部上皮内腫瘍(CIN)
女性のヒト乳頭種ウイルス(HPV)感染症においては、頸部上皮内腫瘍(CIN)が認められることがあります。頸部上皮内腫瘍(CIN)は、細胞診(子宮頸部の擦過標本による)、コルボ診(コルボスコープ:子宮頸部拡大鏡による子宮頸部の観察)による生検よって確認される、上皮細胞の異型です。
頸部上皮内腫瘍(CIN)は組織異型度によりCIN 1−3の3グレードに分けられます。上皮層の1/3に異型細胞が認められる場合(軽度)をCIN 1 、2/3に認められる場合(中等度)をCIN 2、上皮全層に認められる場合(重度)をCIN 3と呼びます。
頸部上皮内腫瘍(CIN)は、HPV感染による癌発生の前段階と考えられ、何年もかけて浸潤的頚癌へと進行して行きます。特にCIN 3の場合、自然緩解せず、治療されない場合は浸潤癌になります。
HPVのうちHPV16、18、31、33型などの悪性型に感染すると、重度のCINへの進展、あるいは癌化しやすい傾向があります。
女性のヒト乳頭種ウイルス(HPV)感染と発癌の関連
ヒト乳頭種ウイルス(HPV)の中には子宮頸部癌の発症と強い関連をもつものがあります。
現在同定されているHPVのタイプのうち、尖形コンジロームは主にHPV6型あるいは11型の感染で生じ、これらが悪性化することはきわめてまれですが、粘膜型の高リスク型、中間型と呼ばれるタイプのHPVが子宮頸癌発癌にきわめて重要な役目を果たすことが知られています。