性感染症(STD)と不妊
目次
- 卵巣周囲の障害
- 卵管周囲癒着とそれに伴う可動性の障害
- 卵管采の障害
- 卵管機能の損傷の原因3 免疫学的炎症
- 卵管機能の損傷の原因2 卵管筋層膠原繊維の増殖による卵管内腔の狭小化
- 卵管機能の損傷の原因1 卵管上皮細胞の障害
- 卵管機能の損傷
- 性感染症(STD)による不妊の原因
- 性感染症(STD)と不妊
卵巣周囲の障害
卵管周囲癒着と同様に、性感染症による腹腔内の癒着に伴い卵巣周辺にも癒着を生じることがあります。これにより排卵された卵の卵管への輸送が障害され、不妊につながることがあります。
卵管周囲癒着とそれに伴う可動性の障害
淋菌・クラミジアなどの性感染症の上行性感染の結果、腹腔内の癒着が起きることがあります。これが、子宮付属器とその周辺で起きたとき、卵管の可動性が損なわれ卵輸送機能、卵捕獲機能が障害され不妊症の原因になることがあります。
特にクラミジア感染の場合、自覚症状のほとんどない線状の癒着となるため、腹腔鏡検査あるいは開腹によりはじめて確認されることもあります。
これらの場合、卵管の可動性を回復するため癒着解離術が行われます。
卵管采の障害
腹腔内に性感染症による感染が波及すると一過性に多量の腹水が発生します。これが関与して卵管采が収束的な癒着を起こし、そのため卵の捕獲機能が障害され不妊の原因となります。
さらに癒着がひどくなり、完全な閉塞に至ると卵管留水腫を形成します。
卵管機能の損傷の原因3 免疫学的炎症
これは近年の動物実験の結果わかってきたことですが、感染の原因となる微生物の同属異種の感染が他の部位に起きたとき、卵管に免疫学的炎症が起きる可能性があります。
性感染によるクラミジア感染(原因微生物:クラミジア・トラコマチス)が起き、その終息後にたとえば肺にクラミジア・ニューモア(肺炎を引き起こす)が感染した場合、卵管で免疫学的炎症が呼応する形で起き、卵管筋層膠原繊維の増殖につながるというものです。これまでに臨床的な報告例はありませんが、クラミジア感染による卵管性不妊症の原因のひとつとして詳しい検討が期待されます。
卵管機能の損傷の原因2 卵管筋層膠原繊維の増殖による卵管内腔の狭小化
卵管筋層膠原繊維の増殖による卵管内腔の狭小化は、一過性の感染ではおきませんが、感染が繰り返すと卵管筋層の膠原繊維が肥厚するかたちで内腔側にせり出し、卵管内腔の狭小化あるいは閉塞が起きます。
特に無症状で経過する女性のクラミジア感染症・淋菌感染症では、無治療のまま反復感染を起こすことになり、卵管内腔の狭小化あるいは閉塞につながることがあります。
卵管機能の損傷の原因1 卵管上皮細胞の障害
卵管上皮細胞には、排卵された卵、あるいは受精が成立した卵を卵管采側から子宮内へ輸送する線毛細胞と、卵管内の環境を整える卵管内液を分泌する分泌細胞があります。
性行為による卵管の感染は、感染が性器から上行性に腹腔内に広がることで起こります。上行性感染により感染が卵管内に達すると、これら卵管上皮細胞が損傷を受け、線毛細胞の線毛の乱れによる繊毛運動障害が生じ、卵の輸送を妨げ、卵管性不妊症に至ります。
感染が一過性の場合には、損傷を受けた卵管上皮細胞は修復され卵管機能は正常に回復すると考えられますが、感染が繰り返すことにより卵管上皮細胞の異常が常にあるような状態になると不妊につながると考えられています。
卵管機能の損傷
性感染症による卵管性不妊は卵管機能の損傷で起こります。卵管機能の損傷の原因としては、卵管上皮細胞の障害、卵管筋層膠原繊維の増殖による卵管内腔の狭小化、免疫学的炎症があげられます。
性感染症(STD)による不妊の原因
性感染症(STD)による不妊の原因には、
1)卵管上皮細胞の障害
2)卵管筋層膠原繊維の増殖による卵管内腔の狭小化などによる卵管機能障害
3)卵管采の障害
4)卵管周囲癒着とそれに伴う可動性の障害
5)卵巣周囲の障害
などがあります。
性感染症による女性の不妊は、上述のように卵管および卵巣が受ける組織学的・機能的変化が原因で、卵の発育に障害が現れることはありません。したがって、これら組織学的・機能的変化を修復することにより、正常な働きを取り戻すことができる可能性もあります。また、卵の発育障害は現れないため、体外受精も選択肢となり得ます。
性感染症(STD)と不妊
性感染症感染による女性の不妊は、感染が性器から上行性に腹腔内に広がり、卵管機能などを障害することで起こります。したがって、感染が外陰部にとどまるものなど感染しても不妊を生じることのない性感染症もあります。
不妊を引き起こす性感染症としては、従来、淋菌感染症が主体でしたが近年、クラミジア感染症が大きな問題となってきています。