母子感染
目次
- トリコモナスの母子感染
- カンジダの母子感染
- 梅毒の母子感染
- その他の細菌による性感染症の母子感染
- 淋菌の母子感染
- パピローマウイルス(HPV)の母子感染
- 小児のクラミジア感染症の診断と治療
- 小児のクラミジア感染症の症状
- クラミジア(Chlamydia trachomatis)の母子感染
- エイズ/HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染の母子感染
- 成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の母子感染
- C型肝炎ウイルス(HCV)の母子感染
- B型肝炎ウイルス(HBV)の母子感染
- 新生児ヘルペスの診断・治療
- 新生児ヘルペス
- 単純ヘルペスウイルス(HSV)の母子感染
- 母子感染によるサイトメガロウイルス(CMV)感染症の治療・予防
- 母子感染によるサイトメガロウイルス(CMV)感染症の診断
- 母子感染によるサイトメガロウイルス(CMV)感染症(先天性CMV感染症)の症状
- サイトメガロウイルス(CMV)の母子感染
- 新生児の母子感染症が疑われる所見
- 経胎盤感染による胎児・新生児の臨床症状
- 経母乳感染
- 産道感染
- 上行性羊水感染
- 上行性経胎盤感染
- 血行性経胎盤感染
- 母子感染の感染経路
- 性感染症の母子感染の特徴
- 母子感染を起こす性感染症
- 母子感染
トリコモナスの母子感染
母子感染の生じることはまれですが、新生児における感染例としては、産道感染による膣トリコモナスの例が報告されています。
カンジダの母子感染
妊娠中に膣内で増殖したカンジダは、上行性経胎盤感染あるいは産道感染で新生児に感染します。
上行性経胎盤感染では、先天性皮膚カンジダ症、先天性全身性カンジダ症の発症や流産の原因になります。一方、産道感染では鵞口創、新生児寄生菌性紅斑など表在性の感染にとどまりますが、未熟児では全身性カンジダ症に進展することもあります。
治療は抗真菌剤の投与が第一選択となり、静注や経口投与で治療は行われます。
梅毒の母子感染
先天梅毒は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の経胎盤感染により起こります。
胎児梅毒は、胎児の流産・早産や死産の原因になります。
乳児梅毒(早発性先天梅毒)では、生後1ヶ月位に、鼻炎、皮膚の発疹、骨病変(骨軟骨炎、骨膜炎など)、肝脾腫、リンパ節の腫れなどが現れます。
遅発性先天梅毒では、学童、思春期に、骨、皮膚、粘膜、内臓の病変が現れます。ハッチンソン3徴候(ハッチンソン歯、角膜実質炎、内耳性難聴)が有名ですが、実際見られることは少ないとされています。
治療は、ペニシリン系あるいはセフェム系抗菌薬の投与で行われます。妊娠中、十分な治療を行った場合には先天梅毒の発症は少なくなります。
先天梅毒と診断された場合には、児にもペニシリン系抗菌薬の投与が行われます。
その他の細菌による性感染症の母子感染
母子感染を起こす細菌の多くは産道感染で感染しますが、上行性経羊水感染で胎内感染を起こすこともあります。
新生児肺炎は、産道感染による大腸菌や生後の水平感染によるブドウ球菌などの感染で発症します。
生後2-3日以内のB群レンサ球菌(GBS)、大腸菌、リステリアによる敗血症は予後不良となります。髄膜炎は敗血症に合併したものが大半を占めています。
淋菌の母子感染
淋菌の母子感染としては産道感染による新生児結膜炎があげられますが、予防的点眼の実施により現在ではほとんど認められません。しかし、新生児期以降の乳児における結膜炎が少数ながら報告されいます。
パピローマウイルス(HPV)の母子感染
パピローマウイルス(HPV)は、尖形コンジロームの原因として知られていますが、近年子宮頸癌との関連が注目されています。妊娠中にHPV感染が増悪し、胎児の発育に影響を与えることも報告されており、産道感染の可能性も示唆されています。
小児のクラミジア感染症の診断と治療
確定診断はクラミジア(Chlamydia trachomatis)の組織培養による分離により行われます。また、直接塗沫標本からの抗原検出、EIA法による抗原検出、PCR法など病原体核酸検出法なども診断に応用されます。
一方、新生児・乳児肺炎においては特異的IgA、IgM抗体の検出が有用です。
封入体結膜炎の治療は、エリスロマイシンなどマクロライド系抗生物質点眼薬あるいは眼軟膏の投与を通常10-14日間行います。
クラミジア肺炎の治療にもマクロライド系抗生物質の内服投与が10-14日間行われます。
小児のクラミジア感染症の症状
小児のクラミジア感染症では、新生児の封入体結膜炎あるいはクラミジア肺炎が認められます。
新生児の封入体結膜炎は、多くが生後3-13日で発症し、明らかな眼瞼腫脹(腫れ)を伴い、偽膜形成が認められることもあります。また、片側性あるいは両側性に膿漏眼が認められます。
一方、クラミジア肺炎は、通常生後3-16週に軽度の咳、鼻汁を伴い発症し、多くは無熱性で遷延性の経過をたどります。多呼吸や嘔吐、チアノーゼを伴う痙攣性咳嗽が見られることもあり、また結膜炎、中耳炎、咽頭炎などの合併もしばしば認められます。
クラミジア(Chlamydia trachomatis)の母子感染
クラミジア(Chlamydia trachomatis)はヒトに固有の発育環をもち、性感染症としてのみではなく、母子感染の病原体としても重要です。
主な母子感染の経路は産道感染で、未治療の感染妊婦からは、新生児の50-75%に母子感染が認められ、20-50%で封入体結膜炎を発症します。また、新生児期、乳児期の肺炎の発症も認められます。
エイズ/HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染の母子感染
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の母子感染では、経胎盤感染、経産道感染、経母乳感染の全てが報告されています。対策としては、母体または胎児への抗HIV剤の投与、母乳栄養の中止、帝王切開による分娩、妊婦治療などが行われます。
わが国の小児エイズ症例に関しては報告が少なく、その実態は不明な点が多くあります。
成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の母子感染
成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の感染経路は、母乳、性交渉、輸血を介するものが主なものですが、胎内感染や産道感染の可能性も示唆されています。
母子感染の予防のためには、母乳の中止、母乳の凍結処理などの処置がとられます。
C型肝炎ウイルス(HCV)の母子感染
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染経路は、輸血などによる感染が主体です。母子感染の実態については不明な点が多くあります。
B型肝炎ウイルス(HBV)の母子感染
B型肝炎ウイルス(HBV)の母子感染経路は産道感染が主なものですが、血行性経胎盤感染、出生後の水平感染なども存在します。
B型肝炎ウイルス(HBV)は主に血液を介して感染しますが、性感染症としての感染経路も存在します。
HBs抗原陽性の妊婦から出生した新生児には、抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)およびHBワクチンによる予防処置が行われます。
新生児ヘルペスの診断・治療
典型的な水疱疹の出現頻度は高くなく、新生児ヘルペスの診断には単純ヘルペスウイルス(HSV)の検出・同定が重要です。PCR法によるウイルスDNA検出も診断に用いられます。
治療には、アシクロビル投与が効果的で、近年妊婦の治療にも応用が試みられています。
新生児ヘルペス
新生児ヘルペスは、目、口、脳などに親和性を有するHSV-1または生殖器などに親和性を有するHSV-2により発症します。わが国の場合、新生児ヘルペスではHSV-1とHSV-2の割合が2:1でHSV-1の方が多く、欧米とは逆になっています。
新生児ヘルペスは、全身型、中枢神経型、皮膚型に分けられます。
全身型はHSVが全身に散布され、肝、副腎、肺などの臓器に病変を発生します(播種性新生児疾患)。これは全体の6割を占め、一般に予後は不良です。
中枢神経型(単純ヘルペス性脳炎など)は、生命の危険は比較的少ないですが、後遺症が多く認められます。
皮膚型は病変が皮膚など表在性に限局し、後遺症なく治癒します。
単純ヘルペスウイルス(HSV)の母子感染
単純ヘルペスウイルス(HSV)による母子感染は、産道感染によるものがほとんどで、胎内感染はまれにしかありません。
母子感染の発生率は、HSV初感染の場合は40-50%ですが、再発型では3-5%と初感染のほうが高い発生率となっています。母子感染の予防には、帝王切開による分娩が行われます。
母子感染によるサイトメガロウイルス(CMV)感染症の治療・予防
免疫抑制状態におけるサイトメガロウイルス(CMV)感染の治療にはいくつかの薬剤が用いられますが、胎内感染、周産期感染におけるこれらCMV感染治療薬の効果は十分に検討されていません。
母子感染によるサイトメガロウイルス(CMV)感染症の診断
巨細胞封入体症の症状が臨床診断の基準となりますが、確定診断は尿などの臨床材料からのサイトメガロウイルス(CMV)の検出、あるいはCMV特異的血清IgM抗体の検出、生検による病理組織あるいは尿中脱落細胞からの巨細胞封入体あるいはCMVの検出によって行われます。
母子感染によるサイトメガロウイルス(CMV)感染症(先天性CMV感染症)の症状
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症では、経胎盤感染により巨細胞封入体症を生じ、肝脾腫、腹水、黄疸、出血斑、小頭症、網膜脈絡膜炎、頭蓋内石灰化などの症状が認められます。予後は不良となる場合が多く、また子宮内発育不全や早産が認められることもあります。
CMV胎内感染児の90%は新生児期には無症状ですが、その約2割程度にはその後精神運動発達遅延、感音性難聴、知能障害、網膜脈絡膜炎などが現れます。
サイトメガロウイルス(CMV)の母子感染
サイトメガロウイルス(CMV)は胎内感染および週産期感染症の代表的なものです。大多数の人が成人に達するまでに初感染を受け潜伏感染の状態となっており、妊婦の90%が抗体を保有しているとされています。
CMVには経胎盤感染を中心とする胎内感染のほか、産道感染、経母乳感染、性行為による感染、輸血による感染、ウイルス排出児からの水平感染などの感染経路があります。
新生児の母子感染症が疑われる所見
新生児の母子感染症が疑われる所見としては、母体の発熱、炎症反応の亢進(CRP(C-反応性蛋白)の陽性、WBC(白血球数)の増加)、早発陣痛、早期破水、前期破水、分娩遷延、羊水混濁、羊水の異臭、胎児仮死、新生児仮死などが上げられます。
出生時に感染症罹患のリスクが認められる新生児には、さまざまな検査が行われます。
また最近ではPCR法などの分子生物学的診断技術が、出生前診断にも応用されています。
経胎盤感染による胎児・新生児の臨床症状
妊娠中の感染により胎児・新生児に異常をもたらす代表的疾患としては、トキソプラズマ、風疹、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルスがあり、これらの感染による症状は、肝脾腫、黄疸、肺炎、血小板減少性紫斑病、髄膜炎、網膜脈絡膜炎など共通のものが見られます。
このため臨床症状のみでの原因の特定は困難です。
経母乳感染
母乳を通じた感染で、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、HTLV-1(成人型T細胞白血病ウイルス)、サイトメガロウイルス(CMV)によるものが主なものです。
産道感染
産道感染は、産道に存在する病原微生物が分娩中に児に感染するもので、細菌・真菌・ウイルス・クラミジアなど多くの性感染症の原因微生物で認められます。
上行性羊水感染
上行性羊水感染は、内子宮口に近い卵膜の感染から羊水に感染が波及するものです。細菌・真菌によるものがほとんどです。
上行性経胎盤感染
上行性経胎盤感染は、細菌あるいはカンジダなどの真菌により生じます。これらが感染すると、脱落膜・胎盤などに炎症・病変形成を起こし、胎盤血行に侵入・感染します。
血行性経胎盤感染
血行性経胎盤感染はウイルスによるものがほとんどです。B型肝炎ウイルスのように直接胎盤血行に侵入する型と、梅毒などのように胎盤に感染した後に胎盤血行に侵入する型があります。
妊娠初期に感染が成立した場合には、胎児・新生児の発育異常、先天異常を起こす場合が多くあります。
母子感染の感染経路
母子感染の感染経路には、血行性経胎盤感染、上行性経胎盤感染、上行性羊水感染、産道感染、経母乳感染の5つの経路があります。
性感染症の母子感染の特徴
性感染症の母子感染の特徴としては以下の点があげられます。
1)妊娠時には胎児に対する免疫学的許容状態にあるため、一般的免疫能および感染防御能は低下状態にあり、また代謝、循環の亢進が認められるため、感染が容易に拡大する
2)局所の浮腫、充血が出現しやすいため、感染が容易に増悪する
3)胎児・新生児は一般的免疫能および感染防御能が未熟であるため感染を生じやすい
母子感染を起こす性感染症
母子感染の原因となる病原微生物はウイルス、細菌など多岐にわたります。母子感染の認められる主な性感染症病原微生物は以下のとおりです。
経胎盤感染:
サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、梅毒トレポネーマ
産道感染:
サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、カンジダ、
クラミジア、トリコモナス、淋菌、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、
成人T細胞白血病ウイルス
経母乳感染:
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、成人T細胞白血病ウイルス
母子感染により発症する性感染症は、病変部位、臨床症状が成人と異なる場合もあります。
母子感染
母子感染とは、妊婦の感染が妊娠中、分娩時、出産後(授乳などによる)に胎児、新生児に伝播することで、垂直感染とも呼ばれます。
また妊娠中の感染で新生児に病変が出現するものは先天感染あるいは胎内感染と呼ばれます。