眼科領域の性感染症
目次
- クラミジアによる結膜炎(封入体結膜炎)
- HIV感染症に伴う眼疾患の合併症
- 単純ヘルペスウイルス2型による急性網膜壊死
- ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)関連ぶどう膜炎
- 梅毒性ぶどう膜炎
- ぶどう膜炎・網膜炎
- クラミジア以外の原因微生物による結膜炎
- 眼科領域における性感染症診断の問題点
- 性感染症として眼疾患を引き起こす可能性のある病因微生物
- 眼科領域の性感染症
クラミジアによる結膜炎(封入体結膜炎)
成人の泌尿生殖器のクラミジア感染の多くは無症候性のため、結膜炎を発症して眼科を受診して初めてクラミジア感染を指摘されることがあります。
通常の結膜炎治療に反応しない濾胞性結膜炎で、病変部位が下眼瞼円蓋部を中心とし、その部位に融合した大きな充実性の濾胞が認められる場合、クラミジア結膜炎(封入体結膜炎)が疑われます。
結膜擦過検体をギムザ染色し鏡検で封入体を検出するか、クラミジア抗原や核酸を検出することで確定診断されます。
HIV感染症に伴う眼疾患の合併症
HIV感染者の30%以上には、何らかの眼疾患の合併症が見られます。
最も多いのが網膜の微小循環障害によるいわゆるHIV網膜症です。無症状で数週間のうちに消失します。このHIV網膜症と眼部帯状ヘルペスはHIV感染症の初期から見られるため、これらが認められた場合HIV感染の検査が必要です。
またHIV感染症が進行し免疫能が極端に低下するとサイトメガロウイルス網膜炎など日和見眼感染症が発症しやすくなります。
ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)によるカボジ肉腫も、エイズ患者の2%程度において、眼瞼、結膜に認められます。
単純ヘルペスウイルス2型による急性網膜壊死
近年、壊死性網膜炎である急性網膜壊死の原因として単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)が注目されています。
一般に仙髄神経節などに潜伏感染し性器ヘルペスの原因の多くを占めるHSV-2が、眼内から検出される理由は不明ですが、性感染症としての発症の可能性も考えられます。
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)関連ぶどう膜炎
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)関連ぶどう膜炎は、硝子体混濁を特徴とした予後良好なぶどう膜炎です。
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の感染経路は、垂直感染(母子感染:経胎盤、経母乳感染)、性交渉による男性から女性への感染が主です。
九州・沖縄での感染率が高いのが特徴であるため、問診による患者の背景情報が診断に有用です。検査は血清中のHTLV-1抗体価測定が行われます。
梅毒性ぶどう膜炎
梅毒性ぶどう膜炎は第2期梅毒の5%程度にみられます。後極部に限局した病変が見られ、硝子体混濁を伴いやすく、視神経乳頭炎など網膜血管炎を合併するなどの特徴があるとされていますが、その症状は多彩で眼所見からだけの診断は困難です。そのため、梅毒血清反応検査を行うことが必要です。
梅毒血清反応検査は、脂質抗原法であるSTSおよびTPHA(トレポネーマ抗原法)を組み合わせて行いますが、第2期梅毒ではこれらの血清反応は100%陽性になります。陽性結果が得られたら定量検査により抗体価を測定します。
ぶどう膜炎・網膜炎
ぶどう膜炎は、虹彩、毛様体、脈絡膜のいずれかに炎症性変化を認める疾患の総称です。単独で起こることも、全身疾患に伴って発症することもあり、周囲の網膜や硝子体に炎症が波及することもあります。
性感染症によるぶどう膜炎・網膜炎には、梅毒性ぶどう膜炎、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)関連ぶどう膜炎、HIV感染症に伴う眼疾患の合併症などがあります。
クラミジア以外の原因微生物による結膜炎
クラミジア以外に結膜炎が認められる性感染症の原因微生物としては、淋菌、単純ヘルペスウイルスがあげられます。
眼科領域における性感染症診断の問題点
近年、感染局所や全身症状をほとんど示さない無症候性性感染症が増えています。そのため、性感染症の患者が、自覚のないまま眼の不調を訴え、眼科を受診することが考えられます。しかし、実際には個々の性感染症による眼疾患が常に特異的症状を示すとは限らないこと、また性感染症症例数が眼科では少ないため、正確に確定診断されることのほうが少ないのが現状です。
性感染症に起因する眼疾患の場合、眼局所からの感染拡大が臨床上問題になることはありませんが、感染を見逃すことにより新たな感染拡大を引き起こす可能性もあり、患者の背景や疾患の特徴、経過を考慮しながら適宜必要な検査を行うことが重要です。
性感染症として眼疾患を引き起こす可能性のある病因微生物
性感染症として眼疾患を引き起こす可能性のある病因微生物には以下のものがあります(カッコ内は発症する眼症状)。
○細菌
梅毒トレポネーマ(ぶどう膜炎)、淋菌(結膜炎)
○クラミジア
クラミジア・トラコマチス(結膜炎)
○ウイルス
単純ヘルペスウイルス(結膜炎・角膜炎・網膜炎)、ヒト乳頭腫ウイルス(尖形コンジロームの原因ウイ ルス:眼瞼・結膜乳頭腫)、サイトメガロウイルス(網膜炎)、ヒトヘルペスウイルス8型(眼瞼・結膜カボジ肉腫)、ヒトT細胞白血病ウイルス(ぶどう膜炎)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV:網膜症、日和見眼感染症)、伝染性軟属腫ウイルス(眼瞼伝染性軟属腫)
○寄生虫
ケジラミ(睫毛ケジラミ症)
眼科領域の性感染症
眼科領域における性感染症の場合、病因微生物は、
1)性器などの感染局所→眼
2)性器などの感染局所→全身→眼
の経路を介して眼疾患を引き起こします。
性感染症として眼疾患を引き起こす可能性のある病因微生物には、細菌、クラミジア、ウイルス、寄生虫などさまざまなものがあります。