産婦人科領域の性感染症
目次
- 検査、診断
- 母子感染
- 妊孕障害
- その他の性感染症
- サイトメガロウイルス(CMV)感染症
- HIV感染症
- 膣トリコモナス症
- 尖形コンジローム
- 性器ヘルペス感染症
- 梅毒
- 淋菌感染症
- 性器クラミジア感染症
- 産婦人科領域の性感染症の特徴
検査、診断
検査、診断
性感染症の診断のためには、問診、視診のほか各種検査の施行が必要になります。
各疾患ごとに診断には以下のような検査が行われます。
淋菌:鏡検、培養、抗原検査
クラミジア: 抗原検査(子宮頸管炎、PID)
性器ヘルペス: 局所所見、抗原検査
エイズ(HIV): 抗原、抗体検査
尖形コンジローム: 局所所見、抗原検査
膣トリコモナス症および膣カンジダ症: 膣内容物の鏡検、培養
梅毒: 血清学的検査
ケジラミ・疥癬: 虫体の検出
診断は自他覚所見を参考に、上記検査法を用いて行われます。
近年、性感染症の重複感染、特に淋菌とクラミジアの混合感染がしばしば認められ注意が必要です。
母子感染
性感染症の母子垂直感染経路は、大きく分けて子宮内胎児感染、産道感染、母乳感染に分類されます。
子宮内感染による主なものは、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、梅毒トレポネーマなど、産道感染による主なものは、単純ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、カンジダ、クラミジア、トリコモナス、淋菌、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などで、母乳感染によるものはヒト免疫不全ウイルス(HIV)、成人型T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)などです。
これらのうち梅毒では先天梅毒、カンジダでは新生児鵞口創、クラミジアでは新生児封入体結膜炎、肺炎を新生児に引き起こします。また性器ヘルペスの母子感染では、新生児のヘルペス脳炎が起きることがあり、重篤な経過をたどることがあります。
妊孕障害
クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、淋菌による子宮頸管炎から上行性感染がおき、子宮付属器炎(PID)、肝周囲炎、子宮外妊娠、不妊などの続発症が起こります。子宮頸管炎の治療はこれらの続発症を予防・減少しうると考えられています。
クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、淋菌感染症による女性の不妊は、上行性感染により主に卵管機能を障害することで起こると考えられ、卵の発育に障害が現れることはないと考えられています。
その他の性感染症
その他の性感染症としては、ウイルス性肝炎(B型肝炎など)、外陰・膣カンジダ症、マイコプラズマ感染症、アメーバ赤痢、ケジラミ症、疥癬などがあります。
またB群レンサ球菌(GBS)感染症や細菌性膣症などもありますが、これらは性関連疾患として考えられています。
サイトメガロウイルス(CMV)感染症
サイトメガロウイルス(CMV)感染症は、サイトメガロウイルス(CMV)の感染により生じますが、ほとんどが不顕性感染です。
垂直感染(母子感染)により新生児に感染し、先天性CMV感染症を発症します。
HIV感染症
ヒトのCD4陽性Tリンパ球にヒト免疫不全ウイルス(HIV)が感染して起こる全身性疾患で、免疫能の低下が進行するとエイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)に至ります。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の母子感染では、経胎盤感染、経産道感染、経母乳感染の全てが報告されています。
膣トリコモナス症
原虫の1種であるトリコモナスによる感染症で、産婦人科領域の性感染症でよく見られる疾患の一つです。感染者の年齢層は他の性感染症とは異なり若者だけでなく中高年まで非常に幅広いのが特徴です。
尖形コンジローム
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)感染により、外陰部とその周辺に小さな乳頭状腫瘤が発生する疾患です。感染後、視診で病変が観察されるまでに3週間以上かかるため、気づかない場合が多くあります。
近年ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)と発癌の関係が活発に研究されています。
性器ヘルペス感染症
単純ヘルペスウイルス(HSV)1型または2型の感染により外陰部、子宮膣部、膣などに浅い潰瘍あるいは水疱性病変を形成する疾患で、症状の強い初感染型と、症状の軽い再発型、誘発型があります。
性器など下半身の感染は単純ヘルペスウイルス(HSV)2型が多いことが知られています。
梅毒
梅毒トレポネーマによる全身性慢性感染症で、顕症梅毒と無症候梅毒に分けられます。
顕症梅毒では初期(T期梅毒)の初期硬結(硬化した病巣部)や硬性下疳に続き、3ヶ月以降のU期梅毒では、梅毒性乾癬や丘疹性梅毒疹などの特有な発疹が見られます。
無症候性梅毒のうち陳旧性梅毒では治療を要しないものも多くあります。
近年顕症梅毒に若干増加の傾向がみられますが、治療の対象となる妊婦梅毒は少ないのが現状です。
淋菌感染症
性器クラミジア感染症とともによく見られる感染症で、淋菌の感染により、主に子宮頸管炎を引き起こします。定型的な場合帯下の増量がみられますが、無症状の場合も少なくありません。潜伏期間は短く、1週間以内に発病します。
近年では特に咽頭、直腸への感染が注目されています。
性器クラミジア感染症
最もよく見られる性感染症で、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)による感染症です。
クラミジア感染症では子宮頸管炎が最も多くみられますが、主訴は帯下(膣からの分泌物)を訴える程度で、2/3は無症状であるといわれています。そのため子宮付属器炎(PID)に進展し、不妊症、子宮外妊娠の誘因、原因になることがあります。
またクラミジア感染は産道感染による母子感染の原因にもなります。
産婦人科領域の性感染症の特徴
産婦人科領域の性感染症起炎微生物の種類は多く、また細菌、ウイルス、原虫、真菌、寄生虫など多岐にわたることが特徴です。
また、他科領域では見られない産婦人科領域における性感染症の問題としては、妊孕障害、母子感染の問題があげられます。